開店したが、客はまばらだ。 「宣伝しなきゃあ駄目ね。明日はチラシを配りに行くわ」 翌日も客はまばらだ。 「リピーターをつくらないと駄目だし、新規のお客さんにも来て貰わない。 明日からはビールの中ジョッキーは100円にしようと思うけれど、どう思う」 「いいわね。それにお好み焼きの半額券も配ったらどうかしら」 「そうだね。客がこなければ商売にはならないからね」 それから少しずつ客が来るようになった。 「一ヶ月は宣伝費だと思って、このままの料金でやろう」 「これじゃあ、仕込み代と光熱費しか稼げないから、今月はただ働きね」 「最初はそんなものさ」 「そのうち、儲かるようになることを信じましょう」 徐々に客が増えたので、ビールの中ジョッキーを500円に戻し、 お好み焼きの半額券を配るのも止めたら、また客が来なくなってしまった。 「客商売って難しいわね。 結局、ビールの中ジョッキーが100円で、 半額券があるから客が来てくれたんだね」 「明日からビールを100円に戻して、お好み焼きの半額券も配ろう。 客が来ないと終わりだからね。有機野菜なんかも止めて、新鮮で旨そうで 値段の安い野菜を使おうよ」 「そうね。このままでは私達の人件費も出ないわ。客が来ても忙しいだけよ」 「このままの料金でお客さんを繋ぎ留めて、新しいメニューを考えようよ。 儲けの多いメニューを考えて」 「ニンニクを利用した健康メニューを考えてみるわ」 翌週にはニンニクを使ったメニューを考え出したが、なかなか注文が来ない。 健康志向のメニューだが、匂いが強すぎたのだ。 「商売って本当に難しいわね。 儲けを見こんだメニューの注文はこないし、 儲けの無いものばっかり出るんだからね」 毎日の仕込みと営業で、睡眠時間は4時間程しか取れないし、 客も来るようになったから営業時間内は忙しく、二人の疲労も限界に近ずいた。 「会社員のときの方が良かったわね。土日はお休みだったし、毎月給与は貰えたし、 日々の仕事も適当にやってれば良かったし」 「俺達は何でこんなに苦労しなきゃあならないんだ」 「このままじゃあ、赤字しか残らないわ」 「辞めるに辞められないね」 「このままの忙しさで、ただ老いていくだけなんて真っ平ごめんよ」 「仕入れに工夫をしてみようよ。魚介類も安くて新鮮なものを探さなくてはね。 明日特別休業して、港へ行ってみないか」
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