二週間程入院している間に、彼女の意識も戻って来た。 彼女に話しかけたが何も覚えていないようだ。 俺のことが解らないのは悲しかったが、医者から命の心配は ないと聞いて安心した。 リハビリも開始して、壁に取りつけられた レールに捉まればなんとか歩けるようになった。 彼女の少しずつ回復 していく姿を見るのが楽しみだ。 店はバイトに任せっきりになり、 毎日病院に詰めている。 その月末に病院の請求書が来た。120万円程の 請求書は二人の貯金から出した。 彼女のリハビリの姿を見れば、 一人で歩けるようになるのはもう少し先のように思う。 オムツの始末は病因でやってくれるので、食事だけは俺がスプーンで、 ひと匙ずつ彼女の口に運ぶ。 何の会話も無いが、 彼女と目を合わせるだけで嬉しい。 頼りなくて危ういはかなさが、 彼女の美しさを増す。 食事の後に彼女の口を拭い、歯ブラシで歯を磨き、 彼女が汗をかくとタオルで身体を拭く。 足の指も念入りにマッサージをする。 柔らかい彼女の皮膚は瑞々しく、電車の中で、 「今日は仕事をさぼっちゃおうかと思うんですが」と言ったときのことを思い出す。 彼女を家に連れて行って、このままお風呂に入れたい。 彼女の隅々まで石鹸で粗い流し、身体中をマッサージして、 彼女の性感帯も彼女が喜ぶように愛撫したい。 でもこのまま彼女を 家に連れて帰ったら、朝から夜まで彼女の世話だけでいっぱいになるから、 彼女が歩けるまで病院でリハビリを続けようと思う。
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