翌朝早く、彼女の実家に行った。
「弥生さんと結婚して、彼女を支える決心で参りました」
「弥生は私達と暮らすか、あなたと生活するか、どちらを望むでしょうか。
食事の支度も自分ではできない娘が、あなたと生活して行けるでしょうか。
私達と暮らした方が弥生も幸せだと思いますが」
「お母さんのおっしゃることも解ります。
これは彼女がパソコンで
書いたものを印刷したのですが、ちょっと読んで頂けますか」
ご両親は彼女が書いた短い日記を、時間をかけてゆっくり読んだ。
「弥生はあなたのことが好きだったんですね。
でもそれは病気になる前のことで、今の弥生はあなたのことさえ判らないんです。
そんな娘をあなたの元へやるわけにはいきません」
「確かに弥生さんは何も判らなくなってしまっていますが、
ご両親のことも俺のことも判らないんですから、条件は五分五分でしょう」
「私達は親ですから、弥生に愛情を持っているし責任もあります。
あなたは未だ他人ですから、こんな娘を私達以上に大事にして
くれるとは思えません。
二日や三日ならできても、
一生こんな娘と生活することは、生半可なことではできません」
「弥生さんをご両親の元へ退院させたのを後悔しています。
正直に言って、足手まといになると思い、弥生さんを引き取るのを躊躇しました。
でも弥生さんの日記を読んで、生きるのに金や商売より大事な
ことがあることを知りました。弥生さんのリハビリを支えながら
一緒に暮らしたいと思います」
