「私、会社を辞めようかと思っているの。経理の仕事なんてつまらないし、 給料も安いし」 「辞めてどうするの」 「自分を試してみたいの。たとえ失敗しても構わないの。 課長や部長や同僚を見ていると、牢屋で働かされている囚人のように見えるわ」 「具体的に何をするか、決めてるの」 「何をするか、まだ解らないの。お金儲けに専念するか、 自分の好きなことをするか迷っているの。お金儲けなら身体を売っても それなりに稼げるかもしれないけれど、そんなことではなく心からやりたい事って 何かを考えているの。生活のこともあるから少し不安だし、経理の仕事しか したことがないから具体的な仕事が思い浮かばないの。持月さんは、 こんなこと思ったことはないの」 「もちろんあるさ。でも漠然と思うだけで具体的に何をするか決められないんだ。 会社勤めしか知らないから、そこからは抜け出せないんだ」 「私も会社勤めしか知らないから、何もできないってこと?」 二人は夜遅くまで、仕事のこと、生きること、日常生活のこと、男と女のこと、 夫婦のこと、家族のこと、会社のこと、色々な話をした。 親子程年齢の違う二人だが、若い頃の恋愛を思い出す。
俺の人生で大切なこと 前のページ 次のページ