それから時々、お好み焼き屋に彼女を食事に誘った。 「会社勤めをして身体も心も年老いて意欲も希望も衰え、 子供はいつか働き始め、家では妻と黙ってテレビを見るだけだ」 「それじゃあ寂しいわね」 「それはそうだけど、自分を誤魔化して生きることしか出来ないんだ」 「そうね。それが社会の秩序や家族の幸福を保っていける秘訣かもね」 「それでも他に選択肢が無ければ、それはそれで良いんだけれど、 他の選択肢に気付いたら、自分に正直に生きるしかないんじゃないの」 二人はお好み焼き屋を出て、近くの公園を散歩する。 「初めて会社をさぼったときのように、恋人のように歩いていいかな」 「あのときからずっと恋人よ。私も持月さんと一緒にいるときが一番幸せ」 握っている彼女の手に力を入れて、もう片方の腕で彼女の肩を抱いた。 唇と唇が自然に重なる。
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