二年が過ぎ、調理師の免許を取った。 自信をつけるために、 鰻屋でも板前見習いとして働き二ヶ月が経った頃、 二人の勤めている会社で大規模なリストラが始まった。 俺は子供と妻に相談して、経済的には今まで通りの生活が できるようにするから、退職して店を始める話をした。 それから数日後、会社の上司が俺を会議室に呼んだ。 「持月さんには割増退職金が出ますが、こんな好条件はこれが 最後だと思って下さい。会社としては、この赤字続きを打破するために、 思い切ったリストラをしないと生き残れません。 私の言いたいことは解りますね」 俺はちょっと からかってやろうと思った。 「このまま働く訳にはいかないんですか。 退職金に割増金を追加されても、数年で使い切りそうです」 「どうしてもって言うことなら考えてみますが」 やばい。このまま働いて下さいなんて言われたら困る。 「この割増退職金には特別のルールがあって、 もし明後日中に辞める決心が着けば、 更に半年分の給与を割り増しできますので、考えて頂けませんか」 「半年分を追加すると、二年半分の給与を退職金以外に支給するということですか」 「そうです。それ以上は出ません」 「家に帰って考えてみます。明後日までに返事をさせて頂きます」 と言って会議室を出たが、バンザイと言いたいところを抑え、 彼女に電話を掛けた。
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